2018年06月14日

さらば恋人(とも)よ 〜さよならの向う側

「兄貴!久し振りじゃねーか!」バイトリーダーならぬ、ボーイリーダーが開口一番こう叫んだ。恐らく半年振りだったか。馴染みのマダムは別の店に移っていた。懐かしいルームの数々を横目に、一番狭いルームに案内してもらった。ボーイがセットアップした後の独りの時間。煙草に火付けて眼を閉じる。この店の独特の香り、階下から聞こえてくる他の客のカラオケ。何もかもが懐かしい。果たしてマダムが女子達を引き連れて来た。相変わらずの粒揃い。その中にスマホを片手にじっとこちらを見つめる小柄な娘。眼が合うと首を傾げる。これも縁だと座らせてみた。「anh …あのね?xuanってコ知ってる?」彼女は元カノの名を口にした。「私anhのこと知ってるよ」とスマホの画面をフリックすると、一枚の写真が現れた。元カノと私の古い写真であった。「君、こいつを何処で?」「やっばりanhだ、だって私、xuan姉さんの従姉妹だもん」これは天使の悪戯か?暇を持て余した小悪魔の遊びか?「姉さん、結婚したんだよ、綺麗でしょ?」そう言って見せられた写真には、白いドレスの彼女が微笑んで斜め上を見つめ、その先には銀色のスーツの好青年が居る。「おまえってヤツは…」幸せそうな表情を貰って思わず笑ってしまった。「anh 、姉さんの元カレだったんだよね…」「そうさ、ここはね?君の姉さんと私が初めて会った場所なんだよ」さらば恋人、さらばともよ。永遠にさよなら。

〜 エピローグ 〜
「ええ…私、従姉妹だよ…そんなこと出来ないよ…」二十歳のtruc anは唇を噛んだ。「姉さんはもう結婚したんだよ?君はね?姉さんからの贈り物なのさ」薄くなったビールを一息に飲み干す彼女。「うん…でも…」強引に長いキスをした。truc anの手が肩に回って爪を立てた。「anh quan tam em duoc khong?」そう言って上目遣いで見つめるtruc anの小さな身体を抱きしめた。花は散り、また開き、歴史は繰り返し、そして愛も。さらば恋人、さらばともよ。ご馳走さまでした。


posted by 西貢日報社 at 19:28| Comment(1) | 西貢日記 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ううっ。甘酸っぱい思い出からの、
ドキドキタイム!
いいですね~w
Posted by コムタム at 2018年06月17日 14:02
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